2026年2月20日、米連邦最高裁判所は、トランプ大統領が看板政策として進めてきた関税措置に対し、憲法違反であるとの歴史的な判決を下しました。
この判決により、これまで「国際緊急経済権限法(IEEPA)」を根拠に徴収されていた関税は即時終了となりましたが、政権側は直ちに1974年通商法122条を繰り出し、2月24日から新たな全世界10%関税を発動しました。

本記事では、通商政策の劇的な転換点となった今回の判決の内容と、日本企業や個人輸入、世界経済に与える実務的な影響を分かりやすくまとめます。
1. なぜ「違憲」なのか?最高裁判決のポイント
今回の判決(Learning Resources, Inc. v. Trump等)の核心は、課税権は議会にあるという憲法の基本原則に立ち返った点にあります。
判決の主な理由
- IEEPAの解釈: IEEPA(国際緊急経済権限法)が認めているのは「輸入の規制」であり、歳入を目的とした「課税」までは含まれないと判断されました。
- 重大な質問の法理: 経済に巨額の影響を及ぼす決定には、議会による具体的で明確な授権が必要であるという法理が適用されました。
- 権力分立の維持: 大統領が独断で広範な関税を課すことは、立法府(議会)の権限を侵食するものとして退けられました。
これにより、トランプ政権が「国家緊急事態」を理由に課してきた相互関税や全世界一律関税の法的根拠が失われました。
2. 2月24日発動!「1974年通商法122条」による新関税とは
司法に道を塞がれたトランプ政権ですが、その数時間後には代替案を打ち出しました。それが、2026年2月24日午前0時1分(米国東部時間)から発動された新たな10%関税です。

新関税の概要
今回の根拠法は「1974年通商法122条」です。これは国際収支の赤字に対処するための法律ですが、IEEPAに比べていくつかの制限があります。
| 項目 | 内容 |
| 対象 | 全世界からの輸入品(一部除外あり) |
| 税率 | 一律 10% |
| 期限 | 原則として 150日間(2026年7月23日まで) |
| 例外 | カナダ・メキシコ(USMCA)、重要鉱物、医薬品、エネルギー等 |
実務上の猶予措置
輸入業者への配慮として、2月24日以前に船積みされ、2月28日までに輸入申告される貨物については、この10%関税の対象外とする特別ルールが適用されています。
3. 過去に支払った関税は戻ってくるのか?(還付金問題)
今回の違憲判決により、過去1年間に徴収された数千億ドルの関税が「不当な徴収」となった可能性があります。
- 還付総額: 最大で 1,750億ドル(約27兆円)に達すると推計されています。
- 還付の手続き: 自動的に返金されるわけではなく、輸入業者が税関(CBP)に対して正式な抗議(Protest)や申告修正を行う必要があります。
- 長期化の懸念: トランプ大統領は「訴訟で何年もかかるだろう」と述べており、実際の返金までには相当な時間を要する見込みです。
4. 日本政府の対応と対米投資への影響
日本政府は、今回の司法判断を冷静に分析しつつも、対米外交の基本路線を維持しています。

- 投資計画の継続: 2026年3月の高市首相訪米を控え、日本側は360億ドル規模の第1弾投資プロジェクトを公表しました。
- 経済安全保障の強化: 合成ダイヤモンド製造や原油輸出施設など、米国の戦略的セクターへの投資を通じて、関税リスクを回避しつつ同盟関係を強化する方針です。
- 協議の要請: 新たな122条関税についても、日米の経済協力を損なわないようワシントンに対して継続的な働きかけを行っています。
5. まとめ:今後の注目ポイント
最高裁によるブレーキはかかったものの、トランプ政権の保護主義的な姿勢に変化はありません。今後の焦点は以下の通りです。
- 150日の期限後: 政権が122条関税を延長するのか、あるいは301条(不公正貿易)などの調査に基づき、より強固な法的枠組みへ移行するのか。
- 議会の動き: 「課税権は議会にある」と明言されたことで、議会が関税権限をコントロールするための新法を制定するかどうか。
- 市場の反応: 関税収入の減少による米国の財政赤字拡大が、長期金利やドル円相場にどう波及するか。
日本企業にとっては、関税の法的根拠が目まぐるしく変わるポリピーク(多重危機)の状況が続いています。常に最新の通商情報をアップデートし、柔軟なサプライチェーンの構築が求められます。
免責事項: 本記事の情報は2026年2月時点の分析に基づいています。具体的な通商実務に関しては、専門の通関士や法務アドバイザーにご相談ください。